「現代数学入門」同型 構造という考え方

同型 構造という考え方

集合は、現代数学を生み出すのに大きな役割を果たしたものなのです。
その後すぐに、「構造」という考え方が登場してきました。

さて、この構造とは何なのでしょうか。
構造を考えるのに集合と共に考えた方が解かり易いかもしれません。
構造とは、集合に何かが加わったものなのです。
集合とは、単なる要素の集まりで、要素相互の関係は全く考えていません。

しかし、構造とは、其の集合の要素の間に何らかの相互関係が規定されているものの事です。
この要素の相互関係を構造と呼びます。

構造という概念は、建築に例えると解かり易いです。
建物が建つ前に建築材料を持って来なければ建物は立ちません。材料が集まってくるところを集合と看做します。
この状態の時は、未だ、建築資材は相互に関係なく集められています。
しかし、建物が建ち始めると建築資材の一つ一つが意味を持ってきます。
つまり、建築材料一つ一つが相互に意味を持ってくるのです。
これが構造です。
要素がそれぞれ相互関係を持っている事を構造と言います。

しかし、建物は、実際に存在する物体で出来ていますが、数学の集合の要素は、現実に存在するものばかりではありません。
それは概念であっても構わないのです。
例えば、日月火水木金土は物体ではありません。

同型 構造という考え方 二

数学の集合の要素は、日月火水木金土のようなものでも構わないのです。
そして、此の日月火水木金土をよく見ると、日の次に月が来ていて、この要素にはお互いに相互関係があります。
これをうまく表すのには、日月火水木金土を円として書き表わすとその構造がはっきりとします。

このように構造というものを前提にして私たちは暦を考えている筈です。
一年365日というのは、構造を持っています。
この見方をすれば、構造というものが解かり易いと思います。

構造が解かる一例として、じゃんけんがあります。
じゃんけんには、石、鋏、紙がありますが、じゃんけんでは、お互いに強い弱いという相互関係があります。
私たちは、そのルールのもとにじゃんけんで勝ち負けを決めているのです。
じゃんけんでしたならば、その構造は「三すくみ」といえます。
そして、ヘビ、カエル、ナメクジは三すくみの関係と言われています。
これを数学でゆうところの同型です。
どちらも「三すくみ」の関係を持っています。

このように 集合の要素が同じ構造をしている場合、同型と言います。
人間は、パターンが同じものを見分ける能力があります。
このパターンが同じものを同型と言いますが、このように世の中には、パターが同じものはいくらでもあります。
ものは違っているのですが、パターは同じものを数学で同型と言います。

同型 構造という考え方 三

また例を挙げれば、人間には血液型があります。
分類は幾種類もあるのだそうですが、よく知られているのは{О,A,B,AB}の四種類がよく知っている血液型です。
血液型は四つあると言えば、正しいのですが、血液型にも相互関係が存在します。
それは、どの血液型からどの血液型へと輸血が可能かという関係です。
これはО型がA型とB型に輸血ができ、A型とB型ははともにAB型に輸血が可能です。

個の関係とそっくりなものに6という数字にもあります。
6の約数はどれだけあるのかといえば、{1,2,3,6}です。
1と2と3と6自身の四つがあります。
この6の約数には、割り切れる、割り切れないという相互関係が存在します。
1は2を割り切れます。
2は6を割り切れます。
3は6を割り切れます。
この構造をよく見るとさっきの血液型の輸血のパタンと同じ構造をしている事が解かる筈です。
つまり、これは同型なのです。

もう一つ例を挙げれば、日本の四国の県は、香川、愛媛、徳島、高知の四県があります。
四国の中の四つの県を挙げなさいと言われて、先の四県を挙げれば正解で、これは集合といえます。
これだけでは、この集合の四県に構造はありません。
しかし、どの県がどの県と接しているのかを考えますと、四県に対して相互関係が生じます。

愛媛と徳島が接していて、香川と高知は接していません。
お互いに境を接していると考えますと、一つの構造が生まれます。
この四つの県と同じ配置になっているところは日本名ではいくつもあります。
例えば、九州の鹿児島、熊本、宮崎、大分がそうです。
県境という視点で考えるとこれは、同じ構造をしている、つまり同型です。

しかし、四国の四県とは違う接し方をしている県はいくつもあります。
例えば、北陸の四県は、一直線に並んでいます。
つまり、四国間のような配置のものと、北陸のような配置のものとは、同型ではありません。

つまり、人間は、そのようなバターンをたくさん認識していて、そのパターンに照らして物事を考えるという特性があります。
このパターンを構造と言っているのです。
だから構造は、人間の思考パターンをよく表しているものなのです。

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