「現代数学入門」現代数学

現代数学 一

数学は、20世紀前半では、大学では微分積分の延長のようなものだったのですが、1930年に出版されたファン・デル・ヴェルデンの『Modern Algebra』が「これは数学なのか」衝撃を受けた人が少なくないと言います。

次にフレシェの『抽象空間』(1928年)に出版されています。
当時は、この本が唯一の位相空間の本だったということです。
その後、アレキサンドロフ・ホップの『トポロジー』のようによく整理された本が出版されましたが、『抽象空間』のみの時は、位相空間に関してはこの本しか読む事はできず、しかし、この『抽象空間』はとても読みづらく、証明がしてない本であったために、読者が自分で証明しながら読むしかなかったのでした。

この『抽象空間』もファン・デル・ヴェルデンの『現代代数学』と同じように衝撃を与えたようです。
しかし、現代の数学を学ぶ人は、初めから新しい現代数学を学んでいるので、当時の無数学者が感じた衝撃は感じずなくなっていると思います。
ファン・デル・ヴェルデンの本も「現代」がとれて『代数学』となって出版されています。

『現代代数学』や『抽象空間』で代表される現代数学は、19世紀までの数学とはかなり違っていました。
19世紀までの数学に通暁している人ほど、現代数学に違和感を覚えた筈です。
しかし、数学に通暁していない、素人は、現代数学の方が解かり易いように思えます。

現代数学 二

現代数学の考え方は、余りにも専門化してしまい、数学をもう一度常識的なものに引き戻すというような一面があります。
その事を理解するには、19世紀の数学が到達した理論を見てみればすみます。

例えば、複素変数関数論を見てみれば、解ると思います。
楕円関数からアーベル関数や保型関数までの発展を辿っても、其処には素人の人が理解できそうなものは何一つありません。

また、ガウスから始まる整数論の発展の後を追ってみてもいいです。
それはあくまで数学内部の事に過ぎないことが解かります。
類体論についてもその理論の深さは、素人が手が出せない代物です。

しかし、現代数学では違ってきています。
余りにも専門化してしまった数学をもう一度常識に引き戻し、数学の専門家以外の人にも解かるものにしたという一面があります。

そのために、現代数学に素人の人が接しても驚くどころか、その考え方は余りにも一般的ではないかという印象を持つに違いありません。

もともと、考え方の変革は、多かれ少なかれ価値の逆転、つまり、パラダイム変換を行うももですので、規制の知識を多く持っている人ほど失う部分が多いのではないでしょうか。

現代数学の持っている大きな特徴は、それまでの数学では考えられないほどに広範囲にその行動範囲を拡大したことだろうと思います。
これまで、数学の分野に入りそうにないものまでも数学の仲間に入ってきたのです。

はじめに

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