「現代数学入門」一対一対応

一対一対応

集合論の最も重要な考え方である一対一対応について書きます。
ここに五冊の本があるとします。

その本の集合を

A={a1,a2,a3,a4,a5}

とします。

そして、別のテーブルには五個のケースが置かれているとします。

そのケースの集合を

B={b1,b2,3b,4b,b5}

とします。

a1のケースはb1、a2のケースはb2、……というようになっていると仮定します。
この場合、AとBとの間は一対一の対応となっています。

また、Aの集合を見ますと、五冊の本が一巻から五巻までの一山で積んでいると看做します。
つまり、このAの集合の要素には、「上にある、下にある」という相互関係があるとします。
そうすると、Bも同様に「上にある、下にある」という相互関係が存在していますが、二ケースの山と三ケースの山とに分かれているとします。
つまり、AとBとでは、その要素の間にある相互関係は同じではありません。
つまり、集合Aと集合Bはその構造が違うということです。
違うにもかかわらず、集合Aと集合Bとは一対一の対応が可能なのです。

集合論では、この時のAとBとは同じ値打ちを持つ、つまり、同値と看做すのです。
それは、換言すれば、集合Aと集合Bとの構造を無視したことになります。
このような意味合いで、同値な二つの集合に「5」という共通の名前を与えるのです。

このことは、別段新しい考え方ではなく、人間が自然数を見つけた時には、既にこのことを知っていた筈です。
カントルの考え方はこの点では別段新しくはありませんが、しかし、カントルはこの一対一対応を無限にまで拡張したことに新しさがあったのです。

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