「現代数学入門」集合数

集合数 一

集合論を学び始めた時に、多くの人が感じるのは、その理論に含まれている事が逆説的だということです。
有限の世界では絶対に起きない事が、無限の世界では、いくらでも起きるということです。

集合数というのは、有限集合の個数を無限集合に拡張したものに過ぎません。

有限集合の個数とは、私たちが知り過ぎるほどよく知っています。
しかし、これを無限集合に拡張させるには、もっと詳しくみていかなければなりません。

有限集合について渡したがよく知っていると思うその根拠は、数詞を知っているからです。

1,2,3,4,……

という言葉を知っていて、有限集合の要素の一つ一つに1,2,3,……という言葉を対応させてゆく操作、つまり、「数える」事が出来る事から有限集合の個数は簡単に求められます。

しかし、「数える」という操作は一体全体どういうことを言うのでしょうか。
それは、例えばお皿の上にミカンと頭の中にある1,2,3,……という数詞の間に一対一対応をつける事が「数える」ということです。

例えば、4で終われば、その個数は、4です。
この時に、お皿の上のミカンはどんな並び糧をしていても構いません。
或いは、二つ三つのグループに分けられてあっても構わないのです。

つまり、4というミカンがどういう「構造」をしていても4個という個数は変わらないのです。
つまり、4とは、構造に無関係な概念なのです。

集合数 二

また、1,2,3,……と数える時には個々のミカンはどのような順序で数えても構わないのです。
その順序は、4!=24通りありますが、どの順序でも答えは4です。
つまり、どのミカンを1、どのミカンを2と看做しても構わないということです。
このことは、どのミカンも同じと看做されているのです。
ミカンに「個性」がないと看做しているのです。

次に、1,2,3,……という数詞はミカンばかりでなく、リンゴの集合にもカキの集合にも同じように当て嵌ります。
つまり、1,2,3,……という数詞を仲立ちにして一つのミカンと一つのリンゴは結びついている事になります。
そのために、数詞を取り除くとミカンとリンゴが一対一対応している事になります。

つまり、4個という個数は一つのミカンを一つのリンゴに置き換えても何ら変わりがないということです。

それでは、無限集合を見てゆきます。

有限集合には数詞が使えましたが、無限集合にはまた数詞というものが存在しません。
だから、数詞抜きで「個数が等しい」という定義を考え出さないといけません。

有限集合には二つの集合が同じ個数である、という事は、その要素の間に一対一対応がつけられるという事を意味していました。
この定義をそのまま無限集合に拡張すればいいのです。

二つの無限集合A,Bの要素の間にある方法で過不足なく一対一対応がつけられける時、A.Bは同じ濃度を持つとか、同じ集合数を持つとか言います。

それを

A~B

と書きます。

濃度というのは、個数の無限集合へ拡張したものと考えてください。~は=と性質が似ています。

(1) A~A(反射的)
これは、Aの要素にそれ自身にそれ自身が対応しているので当然です。

(2) A~BならばB~A(対照的)
一対一対応はAからBへ考えてもBからAに考えても構いません。

(3) A~B,B~CならばA~C(推移的)
これはBを仲立ちにしてAとCが一対一対応がつけられるということです。

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