「現代数学入門」可算無限とは

可算無限とは 一

無限かの集合で最もよく出で来るのが自然数の集合です。
これと同じ集合数を持つ集合を可算無限(可付番ともいいます)であると言います。
これは、1,2,3,……と数えられるからです。
数え尽くす事はできませんが、集合のどの要素にも自然数の番号が付けられることは間違いありません。

この加算無限の無限集合は非常に数が多いのです。
例えば、全ての整数の集合もそうですし、整数は、自然数、つまり、正の整数や負の整数や零を含んでいるので自然数より個数が多いように思われがちですが、無限を念頭に置けば、実は、同じなのです。
同じという事は、何らかの形で一対一対応がつけられることを意味します。

また、有理数の個数も可算なのです。
有理数は直線上に密にならんでいますので、自然数よりもはるかに多いと思われるかもしれませんが、これも無限を念頭に置けば同じなのです。
自然数と有理数が一対一対応するという事は、そこに「大小の順序」は無視しています。

一対一対応というと、構造を考慮に入れているものと考えがちですが、例えば、自然数と分数は一対一対応などしていないと考えるのが普通だと思いますが、それがそうではないのです。
構造を無視すると、自然数と分数は一対一対応している事になるのです。

そして、これが代数的数の集合と看做すと、更に逆説的になってきます。

可算無限とは 二

有理数は、

a0x+a1=0

という整数係数の一次方程式の根と考えられます。
ここで「一次」を拡張して「n次」でもよいとすると、代数的数は、a0,a1,a2,……an-1,anを持つn次の代数方程式の根です。

a0x^n+a1x^n-1+……+an=0

このような代数的数全体の集合はやはり可算なのです。
これはカントルが1874年に初めて証明しました。
証明するためには、非常に巧い技巧が必要で、番号のつけ方に工夫が必要なのです。
例えば、一次の代数的数だけを始めに取り出し、それだけで自然数の番号が全て終わりになってしまうと2次以降が残ってしまいます。
だから、次数に従って順々に番号付けはできません。

そこで、カントルは、係数の大きさと次数を同時に考えて行くことにし、この難問を突破したのです。そのためにカントルは高さという概念を持ってきました。

a0x^n+a1x^n-1+……+an=0

の高さというのは、

N=n-1+|a0|+|a1|+……+|an|

であって、Nが1,2,3,……となるものを順々に取り出していって番号をつけたのでした。
Nの中には次数nが入っていますので、上記の困難は消えます。

N=1の時は、n=1,a0=±1の時だけで、±1=0,x=0となります。
N=2の時は、n=1,a0=±2とn=1,a0=±1,a1=±1、及びn=2,a0=±1だけで、方程式としては、

±2x=0,±1x±1=0,±1x^2=0

となります。

つまり、一次方程式も二次方程式も交じってくるのです。
しかし、ともかくも有限個なのです。
このように高さの順序で拾い出してくると、全てに対応します。

カントルが集合論を創始していった始めの頃は、以上のように数学の中に無限集合が可算であるとか、そうでないのかを一つ一つ決めてゆかなければなりませんでしたが、その結果、意外な事が次々と解かってその意外さは、一対一対応が集合の構造を無視していることから来ているのです。

はじめに

古代の数学

中世の数学

近代の数学

現代の数学

現代数学への誘い