「現代数学入門」置換群

置換群 一

操作という以上、操作そのものを考えるのですが、それは難しいものです。
どうしても操作を施す何かのものがなければ、操作を考える事は難しいです。
そのため、操作を考えるとき何かを動かすという形をとる場合が多いです。

例えば、ある群の操作で動かされるものがn個の要素からなる集合であるとします。
そして、その集合は何の相互関係を持っていない無構造の集合とします。
それを1,2,3,……,nという数字で表すとします。

M={1,2,3,……,n}

このn個の数字を入れ替える操作がいくつあるかと言いますと、それはもちろん、n!個です。つまり、n個の集合をかきまわすと操作の全体です。
これがn=3の時は3!=1・2・3・=6で6個の操作があります。
それは次の6個です。
記号は上の数字を下の数字で置き換えるということです。

 1  2  3
(          )=e,
 1  2  3
 1  2  3
(          )=a,
 2  3  1
 1  2  3 
(         )=b,
 3  1  2 
 1  2  3
(          )=f,
 1  3  2
 1  2  3
(          )=g,
 3  2  1
 1  2  3
(          )=h
 2  1  3

このようにn個の数字若しくは文字を入れ替える操作の作る群を置換群といいます。
N=4の時は全ての置換は4!=24だけあります。
このようにn個の数字もしくは文字の全ての置換を作る群を対称群と言います。
しかし、1,2,3,4という数字の並べ方に一定の条件を付けると、その時条件を満たす置換を作る群は24よりも少なくなります。

置換群 二

しかし、1,2,3,4という数字の並べ方に一定の条件を付けると、その条件を満たす置換のつくる群は24より小さくなります。

例えば、1,2,3,4を環状に並べて隣の数字が隣の数字になるという条件を付けますと、次の8個の置換が得られます。

 1 2 3 4
(         )
  1 2 3 4
  1 2 3 4
(          )
  2 3 4 1
  1 2 3 4
(          )
  3 4 1 2
  1 2 3 4
(          )
  4 1 2 3
  1 2 3 4
(          )
  2 1 4 3
  1 2 3 4
(          )
  1 4 3 2
  1 2 3 4
(          )
  4 3 2 1
  1 2 3 4
(          )
  3 2 1 4

ここで、8個の置換が得られますが、これは、位数8を持つ群です。
この群は1,2,3,4が正方形の4つの頂点である時、その正方形を重ね合わせる操作のことです。

この8個の置換の上の四つは、0度,90度,180度,270度の回転です。
90度回転をaとしますと、これらは、

e,a,a^2,a^3

です。

  1 2 3 4
(          )=b
  2 1 4 3

としますと、これは、

3――――2
・   ・
・   ・
………………
・   ・
・   ・
4――――1

の点線を軸と位する回転です。

下の四つは、

b,ab,a^2b,a^3b

で表されます。

ここで、b^2=eです。

だから、b^-1=b

b^-1abを計算してみますとa^3となります。

b^-1ab=a^3

ab=ba^3

この左からaをかけますと

a^2b=aba^3=ba^3・a^3=ba^6=ba^2・a^4=ba^2

更に左からaをかけますと

a^3b=aba^2=ba^3・a^2=ba^5=ba

以上のことから、

a^4=e,b^2=e,ab=ba^3

これを一般化して正多角形を重ね合わせる操作を考えてみます。

正n角形の頂点を1,2,3,4,……,nとして、これを360度/nだけ回転する操作をaとします。

これは頂点の置換してみますと、

 1 2 3 ……n
(           )=a
 2 3 4 ……1

となります。
n回でもとにa^n=eとなります。

置換群 三

ここで、1を通る対称軸について裏返す操作を行うものをbとしますと、

  1 2 3 …… n
b=(              )
  1 n n-1 …… 2

b^2=e

となる事は明らかです。

aとの関係は、

1 2 3 …… n     1 2 3 …… n   1 2 3 …… n
b^1ab==(              ) (       )(       )
     1 n n-1 …… 2     2 3 4 …… 1   1 n n-1 ……2
  1 2 3 …… n 
=(        )=a^(n-1)
 n 1 2 …… n-1

つまり、

b^-1ab=a^(n-1)

両辺を2乗しますと

(b^-1ab)(b^-1ab)=a^('n-12)・a^(n-1)

b^-1a^2b=a^2(n-1)

次に3乗、4乗を作ってゆきますと、一般にk乗の時は、

b^-1a^kb=a^k(n-1)

となります。

以上の関係からこの群の位数は2nで、次の要素で出来ています。

G={e,a,a^2,……,a^(n-1),b,ab,a^2b,……,a^(n-1)b}

この群を2面体群と呼びます。

これは、正多角形をそれ自身の上で重ね合わせる操作の群ですが、立体的に考えると、B,Cを頂点とする駒上の形をした――これを2面体と言います――群です。

このことから、aは頂点B,Cを動かさずに回転させる操作のことで、bは転倒させてB,Cを入れ替える操作のことです。

このような群をDnとして表します。
裏返しのない回転だけの群をCnと表しますと、正三角形を重ね合わせる操作はの群は、D3であり、正方形を重ね合わせる操作の群は、D4です。

以上のことから正多角形に関して次のことが解かります。

C1,C2,C3,……,Cn,……
D1,D2,D3,……,Dn,……

Cnの方は可換群ですし、Dnのほうは非可換群です。

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