「現代数学入門」動的

動的

構造を語るのに建物を例に挙げましたが、建物はいったん建ってしまうと動きません。
つまり、動的ではなく、静的なのです。
このような点で構造とは 静的なものだけに収斂しかねない―危険性が潜んでいます。

例えば、構造を持っていて、その構造が常に変化しているようなものは何かといいますと、生物の身体がそうです。
生物の身体は実に複雑な構造をしています。
生物は、単に細胞が雑然と集まった集合ではありません。
生物の身体は、複雑な相互関係で結び付けられています。
そして、それは常に変化して已みません。
人間に限らず、生まれたり生長したり、死んだりします。
昆虫の身体は変態もします。生物の身体は常に変化しています。

つまり、本来構造というものは動かない、空間的なものではありますが、時間的ではありません。
しかし、実際、生物などは構造を持って変化しています。
時間的に変化しています。
そのために、構造を考えてゆくとどうしても空間的な側面ばかりが強調されて、時間的な面を軽視しがちになる傾向があります。

建物を理解するには無構造という考え方は都合がいいのですが、生物の現象を理解するには不足している部分があるのは否めません。
この点で、空間的でもあり時間的でもある新しい概念が生まれて来る必要があります。
そうでないと、動的なものは見失ってしまうことになりかねません。

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