数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
カントルの集合論は、第一に原子論的だということです。
カントルのそれは、古代ギリシャに始まった自然哲学としての原子論と同じで、あらゆるものを最小単位、つまり、原子にまで分解せずにはいられないということです。
この点で、カントルの集合論は数学的原子論と言っても、あながち間違いではありません。
例えば、集合論は、直線を点の集合、それも無限集合と看做します。
つまり、このことは直線を点に分解したという事を意味します。
カントルは、そのようにして無限という厄介この上ないものを持ち出さざるを得なかったのです。
以上のようにして、集合論は、数学のあらゆる分野に原子論的な方法を導入する事を迫ったのです。
第二に、カントルの集合論は、時間的というよりも空間的ということです。
もともと無限に関して古くから二つの見解がありました。
その一つは、「可能性の無限」と呼ばれるもので、それはアリストテレスに代表されるものです。
1,2,3,4,……
という自然数の数え方に拘るならば、それはいつまでたっても終わらない、つまり、如何なる限界も突き破って越えてゆくという可能性があります。
無限を「如何なる限界をも越える可能性」と考えたのです。
これは、数えるというものが時間的な経過において続くもので、時間的な無限といえます。
この場合、未来に向かって開いていると言えます。