数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
数学は、もともと日常生活からかけ離れたものではなく、何らかの関わりがあったものです。
例えば、「直線」は日常で言う「真っ直ぐな線」と変わりません。
しかし、「このレールは真っ直ぐな線になっている」というのは日常的に解かる事ですが、これを数学的に言うと正しくありません。
それというのも数学的な「直線」に幅があってはいけないからです。
つまり、数学的な直線は日常生活の真っ直ぐな線に基づいていますが、それを厳密に定義したものが直線です。
同じことが「集まり」と「集合」にも当てはまります。
「公園での人の集まり」は日常生活では普通のことですが、数学的に「公園での人の集合」とは言えません。
それは、集合は「閉じていなければならない」からです。
例えば、或る閉じられた部屋に何人かがいる場合は、数学的に意味を持ちます。
部屋にいる人は集合の一員で、部屋の外の人は、集合の一因ではないからです。
これが「公園での人の集まり」は常識的にはごく普通の言い方ですが、数学的には問題なのです。
それというのも、ある人がその集合の一員かどうかがはっきりとしないからです。
公園の入り口を出たり入ったりする人がいた場合、その人が集合の一員であるかどうかは不明です。
ちょうど、ドアが閉じられた部屋のように、そのメンバーがきちんとわかる場合は、数学的にそれは、「閉じている」といいます。
つまり、「閉じている」事が集合の第一条件なのです。
以上のように集合にはメンバーが存在します。
そこで、集合Eに対してそのメンバーをaを集合Eの「要素」といいます。
または、「aはEに属する」といいます。
このことを、
a∈E
で表します。
逆にEに属しない場合は、
a⊂/E (⊂/は含まないを意味します)
と表します。
つまり、Eが数学的な意味において集合であるかどうかはあるものaを持ってきて、aが、
a∈E
か、
a⊂/E
となるかのどちらかしかありません。
また、集合は、別段、物の集まりである必要はありません。
例えば「一週間の曜日の集合」というとき、その要素は物体ではなく、その集合は、日、月、火、水、木、金、土です。
その集合をWとすると
W={日,月,火,水,木,金,土}
となります。
つまり、その要素を全て書き出し{}で囲むのです。
集合={要素,要素,……,要素}
という書き方をします。
例えば「5より大きく10より小さい整数の集合E」は、
E={6,7,8,9}
と書けます。
このように要素を列記するのではなく、その要素が満たす条件を示してその要素全体を表わすという書き方もあります。
例えば、「JRの易全体の集合」というのは、数学的な集合として条件を満たしていますが、要素を全て列挙する事は大変困難です。
そこでその集合歩Aとすると、
A={x|xはJRの駅である}
という書き表わし方をします。