数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
標数pの体は、いろいろな点で標数0の体と違っています。
例えば、
(a+b)^p=a^p+b^p
という恒等式が成立することも標数0の体からは考えられません。
二項定理を使いますと、
p p p (a+b)^p=a^p+( )a^(p-1)b+( )a^(p-2)b^2+……+( )ab^(p-1)+b^p 1 2 p-1
となります。
ここで、
p p ( ),( ),……は、それだけ同じ要素を加えるという意味です。 1 2
これらの数が全てpの倍数である事が証明されれば、標数pということから0になる事が解かる筈です。
p
( )=(P!)/{m!(p-m)!} (1≦m
であるので、
p
p!=( )m!(p-m)!
m
m!も(p-m)!もpで割り切れないけれども左辺はpで割り切れます。
よって
p
( )がpで割り切れなければなりません。
m
(証明終わり)
それ故に、二項展開の中間の項はすべて消えてしまい、両端だけが残りますので、
(a+b)^p=a^p+b^p
という恒等式が成立します。
これは、標数0の体だけを知っている人には誠に奇妙なものだと思いますが、代数を学び始めたばかりの時は、
(a+b)^2=a^2+b^2
などという間違いを行ってしまいますが、これは、実数体のような標数0の体では間違いなのですが、標数2の体では正しいのです。