数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
関数を「点」と看做すような空間を関数空間と呼びます。
簡単のために、xのある区間Iの上に定義されたれ連続関数全体の集合をRとします。
Rを構成している「点」はf(x),g(x),……というような連続関数です。
その時、2「点」間の距離は、
d(f,g)={∫[f(x)-g(x)]^pdx}^(1/p) []は絶対値 I
であると定義します。
このような距離は条件(1)、(2)、(3)を満足します。
ここでも、p=2の場合はピタゴラスの定理が成り立つますので、普通のユークリッド空間と同じように取り扱うことが可能です。
平面幾何では△ABCにおいて辺BCの中点Dとすると、次のような等式が成り立ちます。
AB^2+aC^2=2AD^2+2BD^2
これはピタゴラスの定理からも導けますが、この等式がp=2の関数空間にも成り立つのです。
d(f,g)=∫[f(x)-g(x)]dx []は絶対値
となります。
これは、f(x)とg(x)との違っている部分の面積にあたります。
P=∞に相当するのは、
d(f,g)=sup[f(x)-g(x)] []は絶対値 x
が距離となりますので、f(x)とg(x)との違っている最大のところの値となります。
以上のように関数空間に距離を導入すると、解析学的な事実を関数空間の中の幾何学的な表現に翻訳して捉えることが可能になります。
例えば、関数列
f1(x),f2(x),……,fn(x),……
が関数f(x)に一様に収束するということは、
sup[fn(x)-f(x)] []は絶対値 x
がx→∞につれて0に近づくということを意味しています。
一様に収束する条件はxの値とは無関係なεが定まって、ある番号から先のnに対しては
[fn(x)-f(x)]<ε []は絶対値
となるということですので、これは、
d(fn,f)<ε
ということを意味します。
それ故にfnがfに一様収束するということは、このような空間で点fnが点fに近づくということと同じなのです。
このように、解析学的な命題を幾何学的な映像によって捉えることができる。
このような意味で空間関数は、解析学と幾何学を結び付けるものと言えます。