数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
古代の数学といいますと、現在小学生が学んでいる算数を思い浮かべてください。
そこでは、定理や照明などはなく、同じような問題が集められていて、解き方が説明してあるというものです。
エジプトでは、紀元前三千年か四千年に書かれたといわれている本は、小学生の算数のようになっています。
また、中国の数学の本で最も古いと言われている『九章算術』があります。
この『九章算術』は無旧称から出来ています。
この本がいつできたのかははっきりしません。
いろいろな推測によりますと、中国の春秋戦国時代ごろにできましたが、秦の始皇帝の焚書によって本は焼かれてしまい、秦が滅んで漢の時代にバラバラに散らばっていたものを後世の人が編集したのではないかといわれています。
『九章算術』はとても古いものだということはわかったと思います。
この『九章算術』は世界で最も古いものといわれてもいて、内容は、やはり、似たような問題が集められていて、無それの解き方が詳しく説明してある土地言うものです。
そして、此の『九章算術』は同時代の世界で最も進んだ数学といわれています。
この『九章算術』の八章は「方程」となっています。
これは数学の方程式の語源となっているといわれています。
方程式は中学生で出合うものですが、この「方程」の意味は、まず、「程」は大きさ、量で、「方」は比べるという意味があります。
つまり、量を比べると方程式になるのです。
方程式は左辺と右辺の量を比べてそれがイコールだとしていますので、方程式なのです。
この『九章算術』は現代で言いますと、連立1次方程式を系統的に取り扱っています。
その解き方が見事なのです。
しかし、『九章算術』には定理証明は一切出てきません。
つまり、経験的なものなのです。
当時の本というものは、政府の役人が勉強するもので一般の庶民が勉強するものではありませんでした。
エジプトでも同様です。
政府の役人は数学を知らないと仕事にならなかったというわけです。
田んぼの面積の求め方、三角形、四角形、そして円の面積などの求め方が出てきます。
この点では、現在の数学に引けを取らないかなり高度なものが含まれています。
メソポタニアでは2次方程式の解き方すらも出てきます。
何故、ここまで当時の数学が進展したのかといいますと、当時の社会がかなり高度な数学を要求したためではないかと考えられます。
例えば、国家が出来ると行政を行わなければなりません。
行政の仕事は、まず、税金を取る事に始まります。
それから大きな道路を作る事、それから大河の治水工事を行い、エジプトではピラミッドのような大きな建築物を作る必要に迫られます。
道路を作る事や治水工事をするとか、ピラミッドを建てるとかするためには、相当高度な数学が必要になってきます。
このために、先述したように古代の数学は、生活に密着してゐたために、定理証明がなく、同じような問題の解き方を集めたものになっているのです。
頭の中のみで考えられた数学ではなく、生活に密着し、生活に必要なものとして高度に発展したのです。
例えば、農業が社会生活の主体となっている場合は、学問として発展するのは、天文学です。
つまり、農業にとって一番大切なことは、気候を知る事であり、季節を知る事だからです。
現在、一年365日となっていますが、これは、大昔からそうなっていたのではなく、長い間天体を観測してきたことから解かってきたものなのです。
この一年の周期が解らないと、いつ種をまいて、いつ刈り入れしていいのか解からないので、天文学が必要に迫られて発展したのです。
農業を主とした国家では、必ず天文学が発展しています。
そして、数学も天文学に呼応するように発展するものなのです。
この天文学が発展して、それに呼応して数学が発展するというのは、農業を主体とした国家においてはどれも同じ道をたどるもので、こうして古代の数学は、まず、農業の発展に伴って天文学が発展し、それに呼応するように数学も必要に迫られて発展してきたのです。