数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
集合AとBが二つの無限集合としたときに、その要素の間に一対一対応が成り立つ場合、「AとBとは同値である、または、「同じ濃度を持つ」といい、
A~B
という記号で表します。
ここまでは有限集合とは変わりませんが、これから先が有限集合では決して起こる筈がない事が起こります。
例えば、Aは自然数全体の集合、
A={1,2,3,4,……}
Bは偶数全体の集合、
B={2,4,6,8,……}
としますと、Bは明らかにAの部分集合な事は解かります。
B∩A
ところが、Aの各要素に、Bのなかの、Aの要素の二倍の偶数を対応させますと、
A 1 2 3 4 …… ↓ ↓ ↓ ↓ B 2 4 6 8 ……
AとBとの間は一対一対応が成立する事になります。
つまり、無限を考えますと、AとBとは同値になってしまうのです。
つまり、部分が全体に等しいという事になってしまうのです。
このようにカントルは一対一対応を以てして無限の中へと突き進んだのですが、そこで、カントルはある不思議に遭遇したのです。
それは、直線上の点の集合と平面上の点の集合とが同値になる、というものでした。
ちょっと考えると、2つを比べるまでもなく、平面上の点が多いという結論に至ると思いますが、しかし、無限を以てして一対一対応を考えると2つは同値となるのです。
カントルは、一対一対応によると直線と平面の点が同値になる事を見つけたのですが、自分では、最初それが信じられなかったようで、友人に手紙で「我見れど、我信ぜず」と手紙で書き送っている程です。
カントル自身がびっくりしたのですから、当時の数学界に衝撃を与えたのは言うまでもありません。
この直線と平面での点が同値という事をよく考えてみれば、それがいくら一対一対応ができて、同値だと言ってもこの場合の平面と直線の構造は無視される事はにわかには信じがたい内容だったのです。
先述の本とケースの集合のように集合の構造は無視し、一対一対応になっている事だけに注目しましたが、カントルはこの一対一対応を「遠い、近い」という相互関係の型を示すのみなのです。
簡単に言いますと、近い2点が遠い2点に対応していても一切構わないということです。
以上のことが集合論の大要です。
物の集まり、つまり、集合は、その要素の間には何らかの相互関係が存在します。
つまり、構造があるのです。
しかし、カントルは、一対一対応を以ってするとその構造は無視できた形で集合が新たに見える事を示しました。
その事は、極論すれば、集合論は、一切のものを原子にまで分解する役割を持っていると看做せるということです。