数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
今までの数学を四つの時代に分けましたが、それらを簡単に言いますと、古代は経験的で、そして、帰納的です。
中世は演繹的です。
しかし、それはまだ、動的ではなく、静的です。
近代は動的です。
現代は、構成的なのです。
そして、構造を作り出します。
構成的というのは、最もよい例が建築です。
建築は、自然にあるものを人間の都合がいいように組み立てる事なのです。
建物というのは、自然のままにほったらかしのままに出来るものではありません。
人間が、或る目標を立てて、それに相応のものを建てるので、構造的です。現代数学というのは、このように変わってきています。
数学というのは、新しい構造をつくり出せることが可能となっています。
それが、必ずしも現実の中に実現できる必要はありません。
今までの科学の発展がそのようになっています。
例えば、化学は、昔は自然に存在するものをそのままどのように組み立てになっているのかを分析していました。
水はH^2Oであるように、自然に存在するものをそのままに分析していました。
しかし、化学が発展しますと、今までに存在していなかったものをつくり出すようになります。
これは、私たちの身の回りに幾らでもあります。
合成繊維などは今までの自然に会ったものとは違います。
綿とか絹とかでなく、人間が勝手に合成作ったものが合成繊維です。
合成とは、組み立てを自然にあるものと変えるということです。
石炭というのは、自然に存在していたものですが、それを水素と炭素に分けて、もう一度都合がいいように再構成したものです。
数学の場合、自然の中に存在しないような構造がたくさん生じたのです。
これは数学に限った事ではなく、あらゆる学問がそうなってきたのです。
その典型が人工衛星です。
衛星は、地球には月がありましたが、現在では、人間が人工衛星をどんどんとつくり出しています。
人工と名の付くものは、あまりよくないものがあります。
化学がまだ発展しきっていないために、人工甘味料など人間かに良くないものが数々生まれています。
食料でなく、化学物質の中には、猛毒のものがたくさん生み出されています。
とにかく、人間は、元素を新しく組み合わせて新しい物質がつくり出せるようになりました。
これと同じことが数学にも言えます。
この点が近代の数学と違う点です。
近代の数学は、自然のありのままを非常に精密な顕微鏡で見るようなもので、これが微分積分でした。
しかし。現代の数学は、それとは違い、化学で新しい元素の組み合わせにより、新しい物質を合成するのに、いろいろな力、法則も前もって研究しなければ新たな物質は合成できません。
これが数学にも当てはまるのです。
これを構成的というように名づけます。
建築に限らずに、工業で行っている事は全てが構成的だと言えます。
数学が解かりにくいと思えるのは、この構成的である点にあると思います。
近代までは、自然のありのままを精密カメラで見ることでしたが、現代数学は構成的になっています。
つまり、これまで、存在しなかったものを新たに作り出すのです。
このように人間の考え方が転換したのです。