数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
この生活に密着した数学が一段階上るきっかけを作ったのが古代ギリシャの数学です。
世界史の中で紀元前6世紀から5世紀ごろ、ギリシャ人が登場してきますが、ギリシャは祖までのエジプトやメソポタミアとは かなり違った国でした。
ギリシャでは農業はそれほど重要ではありません。
ギリシャの農産物は、オリーブとかブドウといったものでした。
そうしたものを主に、ギリシャでは地中海貿易をして国が富んだのです。
つまり、ギリシャという国は、それまでの農業を主とした国から商業を中心とした国として世界史に登場してきたのです。
そのために、古代ギリシャで必要とされた数学はそれまでとかなり違ったものとなったのです。
数学というものを語るうえで、古代ギリシャのタレス(紀元前640~546年?)は、忘れてはいけない重要な人物です。
タレスは、ギリシャ哲学の祖にしてギリシャ数学の祖ともいわれています。
また、タレスは商人であったのではないかと考えられています。
そして、当時のギリシャ人はエジプトやメソポタニアともつながりが強かったので、エジプトやメソポタニアの数学を貪欲に取り入れていた筈です。
そして、商人ならではのそれまでと違った視点で数学というものを見ていたと思われます。
ギリシャ人がそれまでの数学になかったものを新たに考え出しました。
それが証明です。
タレスは自分では書物をものにしてはいません。
そのために、タレスがどんなことを考えていたのかということは、ほかの人が書き残したものを見るしかありません。
タレスが行ったことの一つに、三角形の合同の定理といわれています。
それは、「二角と夾辺が同じ三角形は合同である」というものです。
この合同の定理は、タレスが初めて定理として証明したといわれています。
タレスという人は、商売が上手だったといわれていますが、先の三角形の合同の定理は、タレスの商売と大きく関係していると考えられます。
例えば、海岸の2点から沖合を進んでいる船の位置を決定するのに、この三角形の合同の定理を使うと船の位置が決まります。
つまり、海岸があって船が海を航行している場合、陸地の2点の角度が決まれば、船の海上での位置がわかるのです。
また、「二等辺三角形の底辺は等しい」というのもタレスが証明したと今に伝えられています。
数学に証明というものを摂り入れたのがタレスなのです。
タレス以降、証明のない数学というものはなくなってゆき、一般法則を述べて証明するというものが数学では必須のものとなりました。