数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
しかし、近代の数学はニュートン力学のような正確さばかりを追い求めていたわけではなく、確率というものも生み出していました。
確率というのは、物事を大掴みで把握し、原因も大掴みで把握し、結果も大掴みで把握するというものです。
確率が生まれたのは、近代に入ってからです。
ある意味で言えば、確率論は、資本主義と一緒に生まれたと言っても過言ではありません。
それは、何故かといえば、確率論を生み出す結果となったのが、博打、ギャンブルだからです。
ギャンブルというのは、自由なお金を持っていなければできないものです。
昔のように農業が主で、財産といえば、土地と畑だけであるならば、土地を賭けてギャンブルなどできる筈もありません。
ギャンブルをするには、やったり撮ったりできるお金でないと賭けられないと思います。
そのためには、商業が発達し、資本主義が発達した社会でなければ、お金のやり取りもできません。
増しても賭け事などできる筈がありません。
もちろん、ギャンブルは大昔から存在していたようですが、ギャンブルは人間の本性と深く結びついたものに違いなく、人間は、退屈するとギャンブルをする生き物なのです。
そして、ギャンブルを巧くやるために確率論は生まれたのです。
これが生まれたのは、16世紀のイタリアだと考えられています。
イタリアは資本主義が一番早く発達した所です。
このイタリアでギャンブルが盛んにおこなわれる利用になったのです。
確率論理の最初を造ったのが、カルダノ(1501~1576)という人です。
この人は16世紀の有名な学者でした。
3次方程式の解法にも関係がある人です。
3次方程式の根の公式は、カルダノの公式と言われています。
ところが、何で生業を立てていたかといいますと、ギャンブルなのです。
ギャンブル好きで、彼はギャンブルが大変上手だったということです。
そこでカルダノは、ギャンブルの理論を造ったのです。
それが今日の確率論なのです。
次に、フランスでパスカル(1623~1662)、フェルマ(1601~1665)が現われました。
彼らは自分でギャンブルはやらなかったようですが、友人にギャンブル好きの人がいて、彼らが、「この場合はどちらが有利か」という問題を出して、それを考えているうちに確率という概念を生み出したのです。
パスカルは17世紀初めの人です。この頃になると資本主義は相当発展していた筈です。
そして、人口も増えてきて、人口統計の必要が起きてきました。
これもまた、資本主義の発展で人口が増えたおかげです。
必要に迫られて、社会現象の集団的な観察が行われました。
それまでは、社会現象の集団的な観察をする必要がありませんでしたが、資本主義が発展し、人口が増えると、どうしても社会現象を集団的に捉える必要性に迫られたのです。
現在でも、例えば、自動車が大変増えましたが、交差点は信号機のゴー・ストップを何秒おきにするのかは、自動車が1秒間にどれくらいの確率で通るかということを基本にして、計算しなければならない筈です。
昔のように自動車が少なかった時はそれが必要ありませんでしたが、しかし、自動車が増えると、そうはいかなくなってきます。
そこで、社会現象を集団的に捉えるために確率論が必要になったのです。