数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
アリストテレスに代表される時間的な「無限の可能性」に対してカントルが対置したものが「実無限」と言われる考え方です。
それを簡単に言えば、数え尽くされた無限ということです。
例えば、直線を点の集合と看做した場合、その集合は点一つ一つ数えてゆく手続きから独立して、つまり、点は時間的なものから解放されて空間的に併存したものと考えることで、それは空間的で閉じていると言えます。
このような考え方を数学に取り入れたのは、カントルでしたが、カントルと同じ無限観はアウグヌティヌス(354~430)などに既に見られると言われています。
それは、全知全能の神は過去から未来まで一瞬で一瞥する、つまり、「永遠の今」において見通すと言われましたが、この無限観を換言すれば、世界観には、時間的なものは全て消して全てにおいて空間的に見るというものです。
このために、時間的な無限観と空間的な無限観が対立していると看做せます。
このことは有限の場合に既にみられます。
集合数と順序数との対立がそれに当たります。
集合数とは数えるという手続きから独立したもので、この意味で空間的と言え、これに対して順序数は数えるという手続きが基本になっていますので、無時間的といえます。
ネイティヴ・アメリカンの部族の中には、日数はもっぱら順序数で集合数はないということです。
それは、第一日と第二日が同時に存在しないもので、これは、ものすごく解り易い考え方です。
これに対して「二日間」というように日数を集合数として考える考え方は、時間的なものも敢えて空間的に考えるというものから派生したもので、この考え方を徹底したのがカントル集合論なのです。
以上のように、集合論は数学的に原子論的で、空間的なのです。