数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
上述のように群は、「何にはたらくか」という点を一応捨象した操作自身の間の相互関係によって作られる構造でした。
しかし、群がいろいろな局面で適応される場合、「何にはたらくか」という観点を抜きにする訳にはいきません。
群の操作が何かにはたらくといっても、それだけでは漠然としすぎているので、もっと問題を絞ってみると、以下のようになります。
ここに何かの構造Sがあります。
このSは構造というだけで大変に一般的なものと考えておくことにします。
そのために、それは代数的なものであっても、幾何学的なものであっていいのです。
この時、Sの自己同型αというのは、Sの構造を保存し、Sの要素に一対一に写像し、その写像αSは、S全体をカバーするものとします。
言い換えますと、αSはSに含まれるだけではなく、αS=Sとなるものとします。
このようなαをSの自己同型であると言います。
まず、初めに言える事は、このような自己同型の全体は群を作ります。
それは、以下の事で確かめられます。
(1) それは単位元eを含む、eとしては、Sの任意の要素xをそれ自身に写す写像をとればよいのです。
e(x)=x
(2) 任意のαに対して逆元α^-1がある。
a(x)=yであったならばa^-1(y)=xを考えればいいのです。
(3) 2つの自己同型α、βの積はまた自己同型です。
α(β(x))=αβ(x)
となり、βでもαでもSの構造は保存されますので、2つの連続施行によって構造は保存される筈です。
それ故にαβもやはり自己同型なのです。