数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
以上のことからMの全ての部分集合の集合はMより大きいという事が解かりました。
この定理を一般化してみます。
{1}のときは{{ },{1}}……2^1
{1,2,}のときは{{ },{1},{2},{1,2}}……2^2
一般に
n<2^n
となる事は明らかです。
ところが、これは、無限集合でも成立するのです。
「ある集合――有限若しくは無限――の全ての部分集合の別の集合mはその集合より多い」。
ここで「多い」というのは、集合論の意味です。
つまり、Mはmのある部分集合とは一対一対応しますが、Mの全体とは一対一対応できない、という意味です。
ここで、mをMからN={0,1}への写像と捉える事にします。
M↓Nという1つの写像fがあったとき、1に対応するMの要素はその部分集合となりますので、mはN^Mと看做す事が可能です。
Nの個数は、2であり、Mの集合数をlとしますと、mの集合数は2^l となります。
故に証明する事は、次の不等式です。
l<2^l
前に証明したように実数の非可算性はa<2^aでしたので、これは、aを一般のlに拡張したものです。
故に、証明も全く同じにはできませんが、上手に工夫すれば、類推できるのです。
nの要素はMからNへの写像fですので、
y=f(x)
という形に書けます。
もしmとMとが過不足なく一対一対応できたと仮定しますと、
f⇔x
xに対応するfをfxで表します。
ここで、この対応から、次のような写像φをを作りますと、φはMの全てのxに対して
φ(x)=1-fx(x)
となります。
φはmに属するので前のm⇔Mの対応でMのある要素x'と対応している筈です。
φ⇔x'
ところがx'に対応するf'xによってx'はf'x(x')に対応する筈ですが、
φ(x')=1-gf'x(x')
であるからx'では、
φ(x')≠f'x(x')
だから、fとxは違った写像です。これはあきらかに矛盾しています。
それ故にmとMは一対一対応することは簡単に証明できます。
Mの要素xとxだけからできている部分集合{x}を対応すればいいです。
この証明法は、よく考え見ますと、a<2^aの証明と同じ発想法に基づいていることが解かる筈です。
この定理はどのように大きな集合があっても、そのすべての部分集合の集合を作りますと、それより大きくなることを意味しています。
つまり、無限集合でもいくらでも大きくなものであるのを意味しています。
カントルが集合は底無しの深淵であると言ったのは、そういうことを指していたのかもしれません。
つまり、aから出発してもa,2^a,2^(2^a),2^2^(2^a),……をつくってゆくと、いくらでも底無しに大きくなってゆくからです。
私たちは、ある機械の組み立てを研究するとき、大概次のような段階で考えてゆく筈です。
(1) どんなに部分品からできているのか。
(2) それらの部分部品はどんな仕方でつながっているのでしょうか。
機械をひとまず部分品に分解してしまう第一段階が集合論に当たります。