数学が密かなブームということで、遠山啓著「現代数学入門」(ちくま学芸文庫)をもとに現代数学について解説しています。
デカルトは今日無用いられている座標を考え出して、幾何学の考え方を大きく変えました。
この点で、ユークリッドの『原典』とは違っています。
ユークリッドには座標がありませんでしたが、デカルトには座標が存在します。これは大きな違いといえます。
デカルト自身、デカルトはデカルトの新しい幾何学を打ち立てるのにユークリッドを何も参照にしなかったと述べています。
ただ、相似三角形の定理、つまり、「相似三角形の角は等しく、篇は比例する」という定理と、ピタゴラスの定理だけはユークリッドにその原点がありますが、それ以外は何もユークリッドからは何も援用していません。
解析幾何学では座標を使用して直線などを考えるためには相似三角形の定理は必要不可欠です。
この相似三角形の定理がなければ、直線は一次方程式で表されるということが証明できません。
それから、ピタゴラスの定理がなければ、2点間の距離が計算できません。
つまり、ピタゴラスの定理を使って2点間の距離は計算されます。
以上の2つ以外にデカルトはユークリッドから援用していません。
そのために、デカルトが考え出した幾何学は、ユークリッドの幾何学とは根本的に違っているのです。
ユークリッドとデカルトでは結論が同じですが、その内容は根底から違っているのです。
物事をできる限り小さい部分に切り分け目ということも、解析幾何学で実現されています。
例えば、平面上の点がx座標、y座標二つの数の組み合わせで表わされます。
つまり、縦と横に切り分けられるのです。
平面は二次元ですが、平面を二つの一次元の直線に分けられます。
x軸とy軸です。
以上のことからできるだけ細かい部分に切り分けるという分析の方法が採られています。
デカルトの幾何学は、解析幾何学と言われますが、解析を英語にすれば、analysisです。
これを普通の言葉に翻訳しますと、「分析」です。
このように、デカルトの解析幾何学は、点の位置から始まります。
図形の中で最も簡単なものが点ですので、点から、その点の位置を決めることから始まります。
つまり、点の位置を縦と横に切り分けます。
この縦と横は数字で、xとyと数で表されます。
点の位置が二つの数字で表されることにより、幾何学が数の世界と結びつくことになり得るのです。
デカルトによってもたらされた解析幾何学により、数の計算によって、図形の性質を研究するということが可能になったのです。
ユークリッドの『原論』では、計算という手段はあまり使われません。
ユークリッドの幾何学では幾何は幾何としてやるしかないのです。
デカルトになりますと、図形の研究が数の計算というものに取って代わる事で、図形の研究が多いに発展を遂げる事になります。
デカルトは、また、別のところで「自分の行ったことは代数で幾何をやる事ができるようにした」とも述べています。
デカルト以前の幾何は、目に見えるので見通しがよいものなのですが、余り、細かい事はできませんでした。
そこにデカルトが登場したのです。
デカルトの登場で幾何による点が座標になって計算できるものに変貌したのです。
デカルトの登場で解析幾何学が生まれました。
その事で、幾何学者は計算という大変強力な武器を手にし、精密な計算ができるようになりました。
つまり、幾何と代数の両方の長所でもってそれまで代数にも幾何にも存在していた欠点を補っているということもデカルトは述べています。
デカルトの登場によって、幾何が代数と同じようなものに変貌したのです。
デカルト以前は、幾何と代数が別瓶出合ったのですが、デカルトの登場により幾何と代数が結び付けられることになったのです。
これは、デカルトが行った大変偉大な事で、デカルトが登場した事で解析幾何学は、大いに発展する事になり、また、デカルトの登場がこれが近代数学の始まりを告げるものとなったのです。